本文へスキップ

春日部市の社会保険労務士田口裕貴事務所〜労務管理・就業規則・給与計算・労働保険・社会保険・障害年金〜 対応地域:春日部市・越谷市・松伏町・杉戸町・宮代町ほか埼玉県全域、関東近郊

TEL. 070-5077-5484

〒344-0064 埼玉県春日部市南3−14−4−305

労働法入門

労働法について、レジュメ形式でまとめています
参考になればと思います

T 労働法とは何か
1 労働法の目的
近代市民法(民法など)の大原則:「契約自由の原則」
 ⇒「私人の契約による法律関係については私人自らの自由な意思に任されるべきであって、国家は一般的にこれに干渉すべきではない」とする考え方[ 法令用語研究会編『法律用語辞典〔第3版〕』(有斐閣、2006年)354頁。]のこと

しかし、「契約自由の原則」では現実の力関係の差は考慮されない
 ⇒弱者(労働者)は強者(使用者)のいいなりになってしまう

そこで、「契約自由の原則」を修正し、生存権の保障(憲法25条)のもとで力の弱い立場の人も人間らしい生活を送ることが出来るようにするために、労働法ができた

2 労働法の種類
大きく分けて3パターン
@近代市民法の修正・現実に生じる力関係の差の是正を目的とするも
 の(労働基準法・労働安全衛生法・最低賃金法など)
A労働者が自主的に自らの労働条件の向上を図るために使用者に働き
 かける行動をするための保障を目的とするもの(労働組合法など)
B国による雇用環境の整備を目的とするもの(職業安定法・雇用対策
 法・雇用保険法など)
  ⇒基本的に、憲法27条・28条(及び25条)関連のもの

3 現代における労働法の必要性
いわゆる「強い労働者」の出現[ 職務発明を巡る対価の額を争ったものの一例として、オリンパス光学工業事件・最三判平15.4.22民集57巻4号477頁など。]や、一見貧困とは無縁の社会
 ⇒労働法の改正(悪)による、保護の後退

その一方で、いわゆる『ブラック企業』問題の発生
 ⇒前近代的な労働の復活?
労基法を無視し、契約自由の原則ばかりを前面に主張する人も…
 ⇒労働法は、今だからこそ必要な法律であるといえる

U 労働基準法の概要
1 労基法における保護対象
労基法の保護対象は「労働者」である(労基法9条)
⇒「職業の種類を問わず、事業又は事務所……に使用され、賃金を支払われている者」が労働者であるとされている
⇒・アルバイト・パートでも労基法の保護対象である
 ・請負については、労働者に該当する可能性がある

2 労働憲章(労基法3条〜7条)
労働憲章とは、「労使関係で使用者が守るべき基本原則」のこと[ 浜村彰ほか著『ベーシック労働法〔第3版〕』(有斐閣アルマ・2008年)17頁。]
 ⇒労働憲章とは「労働者の自由と平等の保障を目的とする」もので、「第二次大戦前に広く見られた前近代的労働慣行への反省をふまえた規定であり、そこではとくに使用者による労働者の足止めの禁止が重視されている」ことが特徴である[ 西谷敏『労働法』(日本評論社、2008年)74頁。]
具体的には…
 均等待遇原則(3条)、男女同一賃金の原則(4条)
 強制労働の禁止(5条)、中間搾取の排除(6条)
 公民権行使の保障(7条)

3 労働契約に関する規定(労基法13条〜23条)
労働契約の成立や終了に関する規定
よく問題になるもの
労働条件の明示(労基法15条)→詳細は、労基法施行規則5条
使用者が労働者に必ず明示しなければならない事項の一部
 労働契約の期間 就業の場所 従事する業務内容
 始業及び就業の時刻 所定労働時間を越える労働の有無
 休憩時間 休日 休暇 賃金の決定 計算方法 支払時期
 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
その他、使用者が定めを置いている場合に明示しなければならないものもある

解雇予告に関する規定(労基法20条)
 この規定は、使用者が労働者を解雇する場合のもの
⇔労働者が会社を辞めたいときは?
 →民法627条1項により、2週間前に使用者に言えばOK

4 賃金に関する規定(労基法24条〜28条)
賃金支払4原則(24条1項・2項)
@通貨払いの原則 A直接払いの原則 B全額払いの原則
C毎月1回以上、一定期日払いの原則
 ⇒賃金は労働者にとって最も大切なものであるので、労働者の手元
  に確実にわたるようにするため、特に規定がされている[ 浜村ほか・前掲書(注3)106頁。]
最低賃金に関する規定(労基法28条)
 ⇒最低賃金法で最低賃金が定められている
都道府県別で、時間単位で規定
(埼玉県の場合、現在は785円 平成26年10月1日から802円)

5 労働時間などに関する規定(労基法32条〜41条)
1日8時間、週40時間労働の原則(32条)
 ⇔(例外)36条:労働者過半数代表者と書面協定を締結
    ⇒32条の上限以上に労働させることができる
では、そもそも「労働時間」とは何か?
三菱重工長崎造船所事件・最一判平12.3.9民集54巻3号801頁
労基法「32条の労働時間……とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めいかんにより決定されるべきものではない」とした。
 ⇒「使用者の指揮命令下」とか「義務付けられている」行為であるか否かがポイントになる

年次有給休暇(39条)
6ヶ月継続勤務&8割以上出勤で、10日の年次有給休暇付与
 ⇒年次有給休暇はパート・バイトでも発生する
ただ、労働日数によって年次有給休暇日数が少ないことはある

いわゆる「サービス残業」とは、残業をさせているにも関わらず、その時間の賃金(その残業が法定労働時間を越えて行われる場合には、割増賃金も)が支払われないことをいう
・仮に、賃金自体に残業代を含めていると使用者が主張する場合
 ⇒基本給における割増賃金の部分が明確に示され、かつ、その額が法所定の額を超えている場合でなければ、違法
・36協定を締結せず、違法に法定時間外労働をさせていた場合
 ⇒当然、法定時間外労働部分に対する賃金の支払が必要
労働時間規制の適用除外(41条)
いわゆる「名ばかり管理職問題」に関する規定
 ⇒管理監督者の労働時間規制の適用除外(2号)
[ 参考:日本マクドナルド事件・東京地判平20.1.28労判953号10頁
 管理監督者には労働時間規制が適用されないが、これは、管理監督者は「経営者と一体的な立場において、……労働時間等の枠を超えて事業活動をすることを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、また、賃金等の待遇やその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置が取られているので……保護に書けるところがないという趣旨による」ものである。そこで労基法上の「管理監督者に当たるといえるためには、……実質的に以上の法の趣旨を充足する……ものでなければならず、具体的には、・職務内容、権限及び責任に照らし、労務管理を含め、企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか、・その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであるか否か、・給与(基本給、役職手当等)及び一時金において、管理監督者にふさわしい待遇がされているかなどの諸点から判断すべきである」とした。]

6 就業規則に関する規定(労基法89条〜93条)
就業規則とは、「職場内での服務規律や統一的労働条件をあらかじめ規定した使用者によって作成される文書のこと」である[ 浜村ほか・前掲書69〜70頁。]
 ⇒労働条件などの集団ルールのことであり、日本においては就業規
  則が労働契約の内容になる(労契法7条)
就業規則の記載内容
 絶対的記載事項(89条1号〜3号)
  就業及び始業の時間、休憩時間など
  賃金の決定方法など 退職に関する事項
 相対的記載事項(89条3号の2〜9号)
  その定めをする場合に規定しなければならないもの
  退職金・ボーナス・職業訓練・表彰など
 任意的記載事項(89条10号)
  労基法上必要としないものでも、使用者が規定をすることが可能

就業規則の変更については
 ⇒労働契約法9条:原則として労働者の同意が必要
(労働条件=労働契約内容の変更になるから)
 ⇔(例外)労働契約法10条
使用者が一方的に就業規則内容を変更できる場合もありうる

7 その他の規定
安全及び衛生に関する規定
すべて労働安全衛生法へ

年少者・妊産婦保護に関する規定(労基法56条〜68条)
特に保護が必要な年少者・妊産婦について厳格な規定が置かれる

技能者の養成に関する規定(労基法69条〜73条)
前近代的な徒弟制度の排除などを目的としている

災害補償に関する規定(労基法75条〜88条)
ほとんどが労災保険法へ

寄宿舎に関する規定(労基法94条〜96条の3)

監督機関に関する規定(労基法97条〜105条)
労働基準監督官に関する規定などが置かれている
特に104条
1項:事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反す
   る事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁
   又は労働基準監督官に申告することができる。
2項:使用者は、前項の申立をしたことを理由として、労働者に対し
   て解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

罰則規定(労基法117条〜)
労基法は罰則付きの法律
 ⇒労基法違反は、処罰対象となりうる
なお、一番重いものは、5条(強制労働の禁止)に違反した場合

V 最近の労働相談事例
「会社を辞めさせてもらえない」という相談が多数
 ⇒景気回復に伴う人材不足により、労働者に離職されては困るとす
  る使用者が、労働法に違反して労働者の足止めを行っている
具体的には…
 ・使用者による退職願・退職届の受領拒否
 ・強迫(というよりも脅迫)による労働の強制
 ・ノルマが厳しい、労働条件が悪い(長時間残業、残業代不払)
 ・労働契約の内容が、契約締結時に明示されていない場合もあった
 ・さらに、うつ病などに罹患していると考えられる相談者が多数


W 相談窓口について
1 労働総合相談センター
各都道府県労働局に置かれている労働相談窓口
(ただし、忙しいので、対応が少々遅い)

2 いわゆるコミュニティユニオン
地域の労働組合で、個人単位で加入できるもの
職場の労働組合で相談しても解決してもらえないものは、こちらに頼んでみることを検討してみるべきである

3 NPO法人など
有名なところでは、「NPO法人POSSE」[ NPO法人POSSE HP URL http://www.npoposse.jp/]など
労働問題に取り組むNPOは増えてきているので、インターネットなどで探してみると見つかるかもしれない

4 弁護士・社会保険労務士など
自分で探して直接相談するのも良いが、ハズレを引く可能性も大きい
(弁護士・社労士などは、基本的に企業側の存在)
なので、労働法に詳しい人などに紹介してもらうほうが無難

----------

【参考資料など】本文及び脚注であげたものの他に…
厚生労働省作成『知って役立つ労働法 働くときに必要な基礎知識』
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000044295.pdf (最終アクセス 平成26年9月20日)
有田謙司ほか編著『ニューレクチャー労働法』(成文堂、2012年)
生熊茂実・鹿田勝一著『労働総研ブックレット7 ブラック企業と就活・働く権利』(本の泉社、2012年)
村田穀之「時間外労働手当」村中孝史・荒木尚志編別冊ジュリスト197号『労働判例百選〔第8版〕』(2009年)92〜93頁


HOME社会法研究室>労働法入門

社会保険労務士
田口裕貴事務所



代表:田口裕貴(たぐち ひろき)
社会保険労務士
法学修士(労働法)
防災士
2級FP技能士

事務所概要はこちら
代表者プロフィールはこちら

当事務所運営の
アンテナサイト

春日部介護福祉事業
労務支援センター


新規開業時の
社会保険労働保険




【事務所案内】
〒344-0064
埼玉県春日部市南3-14-4-305

営業時間
午前10時〜午後5時
定休日 土・日・祝日・年末年始

TEL 070-5077-5484
午前10時から午後5時まで
電話に出ない場合には、留守番電話にメッセージをお願いします
FAX 048-736-7012


メールフォームはこちら
(24時間受付)


当事務所のFacebookページを作成しました
Facebookページはこちら



当事務所のブログを開設しました
ブログはこちらからどうぞ



〜当事務所でも、一定の事業主や建設業・運輸業の一人親方の労災保険加入手続の取り扱いを開始しました〜

社会法研究室

リンク集

連携協力事務所





特定非営利活動法人
はるいろ

士業相互リンク

社会保険労務士事務所検索








inserted by FC2 system